復興支援助成金

被災地での無償音楽レッスン
エル・システマ無償の音楽教育推進協会 復興支援助成先紹介 File 18

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「エル・システマ無償の音楽教育推進協会」の活動を紹介します。

子どもたちにのびのびできる場を

エル・システマ(英語ではThe Systemの意味)とは、楽器を貸与し、恵まれない子供たちに無償で音楽レッスンを行う活動。南米ベネズエラで生まれ、世界各国で実施されています。日本では2010年に京都で始まり、その翌年には有識者を迎え「エル・システマ無償の音楽教育推進協会」が立ち上げられました。


渡部康子事務局長(右)とエル・システマを支援するママハウスの柳谷励子さん

震災後、同協会の支援者から「被災地でも活動を実施すべき」という声が上がり、寄付が寄せられ、昨年9月から岩手県釜石市でギター教室を開設しました。初めは仮設住宅の子どもたちを対象にスタート。事務局長の渡部康子さんが「仮設住宅の子どもたちは学校が遠くなったため、集会所の利用時間になかなか間に合いません。レッスン場所を確保することが課題です」と語る一方で、この活動を支援してくれている、岩手県花巻のママハウスの柳谷励子さんは、「学校が統合され、子どもが活躍できる場が少なくなってきました。子どもたちにのびのびとやりたいことをやらせられる場を提供していきたいと思っています」と話します。

被災者が自ら活動し、被災者を慰問

環境が激変し仮設住宅内に引きこもりがちな高齢者を元気づけようと、大人へも対象を拡げています。大人を対象にしたエル・システマは世界で初めてのことで、海外のネットワークからも大きな注目を集めています。

練習の様子


佐々木清さん

釜石はもともとギターをはじめ、音楽が盛んな場所。今年9月に発表会を兼ねて開催したコンサートには、NHKの番組で活躍した小原聖子さんの演奏もあり、仮設住宅の住民など100名を超える方々が参加しました。地元でギター教室を開き、エル・システマで講師役をボランティアで引き受けている佐々木清さんは、「発表会には、仕事の都合でほとんど練習ができなかった人もステージに立ちました。それでも経験を積み重ねるのが大事なので良い経験になったと思います」と話します。

演奏会の様子

今後、生徒さんたちによる、被災地でのコンサートを予定しています。「エル・システマは出自、性別、年齢、国籍をいっさい問いません。音楽は、言葉が通じなくてもいっしょにアンサンブルを奏でればコミュニケーションが図れます。被災者が自ら活動し、被災者を慰問するというのは素晴らしいことだと思っています」と渡部さんは、その意義を語ります。

「自分の力で意思を持って行動すれば、夢はかなう。まず一歩ずつ踏みだすことが大切なのだと思います。おかげさまで世界中のエル・システマからの応援の声を頂き、それが支えになっています。エル・システマには『小さく初めて大きく育てよ』という言葉があります。みんなで音楽を奏でることの楽しみを伝えていきたいと思っています」(渡部さん)

希望を失った人、失いそうな人たちへ、希望を。エル・システマ無償の音楽教育推進協会の活動は続きます。

■『エル・システマ無償の音楽教育推進協会』webサイトはこちら

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