復興支援助成金

野球の力で、被災地の子どもたちを元気に
公益社団法人 全国野球振興会 復興支援助成先紹介 File 9

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「全国野球振興会」の活動を紹介します。

学校のグランドが使えない苦しみ

全国野球振興会は、プロ野球選手OB約1,700名で構成。野球の指導員の養成や、プロアマ交流事業、野球教室などを実施しています。震災後、被災地の子どもたちに野球を通じて日常を取り戻すきっかけをつくり、元気になってもらいたい、また夢や目標を持たせ、復興への懸け橋になって欲しいとの願いを込め、被害の大きかった岩手県気仙地区(陸前高田市、大船渡市、住田町)での野球教室を実施することにしました。

今年は9月22日~24日、昨年と同じく、気仙地区中学校体育連盟に加盟している16校を対象に開催。23日は中学生200名を対象に、住田町運動公園で野球教室が行われました。参加した中学校教諭の志田清盛さんは、被災地の野球部をめぐる現状を次のように語ります。

「グランドが使えないため平日は、駐車場でのキャッチボール、道路での走り込み、防球ネットを使ってのバッティングなど限られたメニューのみ。守備や走塁などは全く練習できません。休日は、NPOのセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの支援で無料バスを出していただき、内陸部のグランドに遠征して練習します。保護者にも多大な負担がかかっているのが実情です」(志田さん)


中学校教諭の志田清盛さん

被災地の学校では、運動場の制限が多く、生徒の体力と技術の衰えが懸念されています。子どもの時にプロの技術指導を受けることで、野球のレベルアップにつながると先生の方々も大きな期待を寄せています。全国野球振興会には「元スター選手というよりも、指導力の高い方々に来ていただきたい」という要望が伝えられ、今年も日ごろから野球指導をしているメンバー10名が選抜されました。

技術のみならず、メンタルの指導も

午前中はバッテリー、内野手、外野手に分かれ、打撃と守備練習。打撃練習では生徒一人ひとりに直接、丁寧な指導が行われました。午後は全体練習。走塁とバッティングの練習方法の指導がありました。走塁指導では、選手が自ら手本を示し、ケガをしないためのプレーから、リードの仕方や走るコースの取り方などまで、テクニカルで細かな指導が行われました。


練習風景

そのほか、メンタル面を強化するための指導も。地区の子どもたちの特徴を、本部事業部の川崎佳奈子さんは次のように話します。


本部事業部の川崎佳奈子さん

「実技をしてみましょうと講師が声を掛けたとたん、生徒全員が一歩下がってしまい、笑いが起こりました。控えめなのが、この地区の子どもの特徴かもしれません。全国野球振興会ではメンタル講習も行い、内気な子どもたちの弱点克服にも役立っていきたいです」(川崎さん)

「練習中も大きな声を出すよう指導され、それだけでも子どもたちの表情が明るくなり、打ち解けていく様子がよくわかります。臨床心理士の話を聞いたり、グループディスカッションの場も設けられました。


臨床心理士による講演

全国野球振興会の岩手県代表幹事を務める、元大洋ホエールズの吉田克郎さんは、今後の抱負を次のように語ります。


全国野球振興会の岩手県代表幹事・吉田克郎さん

「野球を通じて、子どもたちを健全に育成するのが最大の目的。非行防止にも役立つはずです。この地区で集中的に実施することに決めたのは、続けて指導することで、しっかりと技術も身につけ、野球を続けて欲しいという思いから。指導するOBも楽しみにしています。先日、内陸部の学校6校と、震災の被害を受けた沿岸部6校とが集まり、日本プロ野球OBクラブ杯という大会を実施しました。苦労しているからでしょうか、根性があり、負けん気が強い。今回は、沿岸部の学校が上位4位を占めました。引き続き指導を続けていきたいと思っています」(吉田さん)

希望を失った人、失いそうな人たちへ、希望を。全国野球振興会の活動は続きます。

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