復興支援助成金

青森から福島に、
交流人口を呼び込む巡礼の道を
東北お遍路プロジェクト

Focus36

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「東北お遍路プロジェクト」の新妻香織代表に活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。

東日本大震災の被災地・被災者への復興活動を開始した理由、きっかけを教えてください。

津波で実家が流されました。観光地だった郷土福島県相馬市は、東日本大震災とその後の原発事故で、漁業も景観もダメになり、再び人が集まるような街にしていくにはどうしたら良いかと考えました。「どうしても来なければならない理由を作ってしまえば…」と考えていたとき、夫が四国出身だったこともあり、“東北でのお遍路”という発想が浮かびました。仙台を拠点に活動している異業種交流会「仙台はなもく七三会」にお声掛けしたところ、支援を頂くことになり、仲間も徐々に増え、前身の『震災巡礼東北の道を考える会』が発足し、2011年9月に活動を開始しました。被災地である青森県の八戸市から福島県いわき市まで1000年継承できる巡礼地を置き、こころの物語を繋いでいく壮大なプロジェクトです。
2012年12月には組織を、一般社団法人東北お遍路プロジェクトにしました。現在、メンバーは12名。候補地となっている各現地の方々といっしょに、プロジェクトを進めています。定期会合を月に一度仙台市で開催。現在は、各担当者が第1次候補として選定した巡礼地の調査をし、その報告と検証作業を進めています。

これまでどんな活動をされてきたのですか。

初めにインターネットや新聞、通信社の情報を使って、巡礼地となるポイントの候補地を3ヵ月かけて公募しました。2013年12月現在、90以上のポイントが候補に上がっています。岩手と青森は広報が行き届かなかったので、沿岸の全自治体を訪ねて巡礼地に適すると思われる場所を紹介してくれるキーパーソンを選びました。キーパーソンには、市民活動をしている方や行政官、市町村会議員の方にもお願いしました。
2012年11月には、活動への理解を広めるため、シンポジウムを開催しました。2013年1月にロゴマークも公募して決定しました。仙台湾の中に女性の顔を線描きしたもので、線の延長が津波被災地の海岸線になっています。また2013年6月には東北お遍路杯 福島・相馬復興支援マラソン(678名エントリー)と被災地ツアーを福島県相馬市で開催し、全国の皆さんに認知されるようになったと感じています。
巡礼地は、震災の「物語」のあるところを選定しますが、その土地の人がふさわしいと思う場所を選定するのが基本。選定するにあたっては、必ず現地を訪ねて地域の方や推薦者にヒヤリングし、自治体の首長や担当者にもお会いします。巡礼地の管理は現地の方にお願いするわけですし、「物語」を語り継いでいくのは現地の方ですから、現地の方々の理解は不可欠です。
それで、巡礼地には神社仏閣のみならず、教会や丘、学校なども含まれています。特定の宗教にとらわれるものでは無く、外国人の方にも歩いていただきたいと思います。
巡礼地がおおよそつながった時点で、マップや本を出版する予定です。それに刺激され、巡礼地に名乗りを上げるところが増えてくるといいと思っています。時々インタビューに対応しているFM放送を利用し、さらに活動を広めていきたいと考えています。

ご苦労された点は。被災者の言葉など、印象に残っていることは?

公募をしたとき、多くの子どもたちが犠牲になった小学校の父兄から、「絶対に候補地にしないで」というご意見を頂きました。地元の方の心情に配慮し、慎重に選ばなければならないと改めて考えさせられました。
活動資金が不足しています。中長期の活動になるので、財源の確保が課題です。青森から福島まで4県にまたがるので、自治体単位の補助金を受けにくいのがネック。また、メンバーは市会議員、コンサルタント、会計士などそれぞれ仕事をしながらの活動です。マンパワー不足も課題の一つです。
巡礼地として確定したところには標柱を設置していく予定ですが、宮城県角田市の山田石販が、標柱を寄付してくださり、これまでに福島県新地町の龍昌寺と相馬市の津神社に立てました。今後、各地で巡礼地が確定していきますので、全国優良石材店組合にも標柱提供のご協力をお願いしているところです。
岩手県山田町でまちづくりに取り組む若者が、「どうしたら人に来てもらえるか、悩んでいた。東北全体で観光ルートをつくり、人を呼べばいいと気づいた。画期的だ」と活動に賛同してくれました。ある自治体の首長からも、「戦略的に利用したい。国道沿いでは通り過ぎてしまうので、巡礼地はぜひ町中につくって欲しい」といった意見も頂いています。

今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。

被災地にお地蔵さんを設置したり、桜の木を植えるプロジェクトと何が違うのかと聞かれることがあります。私たちのプロジェクトは建てたら終わりではなく、被災地の物語を繋ぎこころのみち道をつくり歩いてもらうことが最終目的です。巡礼ということになれば、被災地を巡ることに抵抗がなくなります。また、時間をかけても1つ残らず巡ろうという人が出てくるはずです。外から人を呼び込み、被災地にお金を落としてもらいたいというのは被災地の正直な気持ちです。震災の記憶が風化し、被災地のバブルが終わっても、お遍路ツーリズムを東北から発信していきたいと思います。
私たちの活動は、いうなれば希望の種を蒔いていくことです。各地に丁寧に説明し理解を深めてもらい、一緒に歩んでいければと願っております。また“東北お遍路”の商標を取っていますので、これを利用し、各地の活性化に繋げて頂きたいと思います。例えばお遍路まんじゅうをつくって、お土産にするのも一つです。神社であれば、おみくじを商品開発し、その売り上げを神社の整備にあてても良いと思います。各地のアイディアで、東北の活気を取り戻す一助になればと考えています。

『一般社団法人 東北お遍路プロジェクト』webサイトはこちら

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