復興支援助成金

福島の子どもたちに安心して遊べる
屋内公園「ふくしまインドアパーク」を提供
認定NPO法人フローレンス

Focus35

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「フローレンス」の被災地支援事業部・今給黎辰郎マネージャーに、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。

東日本大震災の被災地・被災者への復興支援活動を開始した理由、きっかけを教えてください。

フローレンスは2004年、仕事と子育ての両立を阻む病児保育問題を解決するため、訪問型の病児保育サービスを提供する団体として設立されました。団体名は、フローレンス・ナイチンゲールのファーストネームから名づけられたものです。ナイチンゲールは、従軍した戦争で戦闘より疫病で亡くなった兵士のほうが多かったことを統計で示し、衛生環境を改善させ死亡率を引き下げました。また、看護学校の建設や運営にあたりました。フローレンスという名には、日本の子どもに関わる硬直した制度や仕組みを変革し、新たな価値を創造したいという想いを込めています。
被災地支援事業として屋内公園をはじめたきっかけは、フローレンス代表理事駒崎弘樹の妻が福島県須賀川の出身で、震災後のあるとき、地元に残って子育てをする友人から、「放射能の影響で外で遊べない」実状を聞いたことからです。保育事業を行う者として何かできることはないか、フローレンスのスタッフ全員で話し合いました。フローレンスでは別事業で、子育て支援事業をしているのですが、そこで屋内公園を運営していました。その運営ノウハウを活かせば、いち早く子どもたちの遊び場が確保できるのではないかということになり、2011年7月より「ふくしまインドアパーク」プロジェクトを開始しました。

これまでどんな活動をされてきたのですか。

2011年7月より、屋内公園に適した場所探しや、地元の親御様からのヒヤリング、資金集め等を開始しました。震災後で自治体や不動産業が混乱していたこともあり、場所探しは難航しましたが、郡山市の大型ショッピングセンターの協力を得て、2011年12月3日「ふくしまインドアパーク郡山園」を開園することができました。132m²と屋内公園としては小規模ではありますが、生後6ヵ月から6歳までの未就学児を対象にして、遊具や玩具の入れ替えを定期的にしたり、毎日、絵本の読み聞かせや体操などのプログラムを行うことで、いつ来ても楽しめる工夫をしています。開園から2周年を迎え、会員数は400人まで増えました。「1年で1万人のお子さんを笑顔にする」を目標に活動をしており、2012年8月に1万人を超え、2013年12月に累計約25,000人のお子さんが来場しました。
ふくしまインドアパークには毎週末、全国から子どもと遊ぶボランティアの方々が来てくださいます。一生懸命遊んでくれるボランティアは、子どもたちからいつも大人気です。中には遠方にもかかわらず何度も訪れてくださる方もいらっしゃいます。そして、地元郡山の英語教室や体操教室の先生、壊れた玩具を修復するおもちゃ病院のボランティアの方々、おもちゃ屋さんや本屋さんが定期的にイベントを開催するようになりました。そうしたイベントが人と人とをつなげるきっかけになり、単なる遊びの場からコミュニティ創出の場へと変化してきています。

こうした郡山園の活動を続けていた2012年2月、南相馬の住民の方より、「ぜひ南相馬市にも屋内公園をつくって欲しい」とお声掛けを頂きました。現地に行き親御様たちとお話ししたところ、原発から30km圏内の南相馬市内に家族が安心して子どもと過ごせる場所がなくなってしまい、週末ごとに仙台などに時間をかけて通っている現状を知りました。そして、1,500人もの親御様から設置を希望する署名を頂き、共につくっていこうと強いエールを頂きました。そこから南相馬園設立プロジェクトが始まり、遊具・玩具の選定や内装の設計、周辺の除染活動などを地域の方々と共に進め、2012年8月14日に開園することができました。
南相馬市で活動している他のNPO法人と共同して開催したクリスマスイベントでは、自分だけのオリジナルミニツリーをつくったり、巨大なお菓子の家をみんなで食べたり、合唱をしたりと、子どもも大人もいっしょに楽しめる大盛況のイベントとなりました。さらに、世界的に活躍しているバレリーナの吉田都さんや、ジャマイカの短距離陸上選手のヨハン・ブレイクさんなど、被災地の子どもたちを勇気づけたい著名人が多くいらしてくださいました。

今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。

被災地の子どもの遊び環境に関するニーズは変化しています。2011年の震災直後では安全な遊び場を提供することが第一でしたが、復興が進むにつれて人と人のつながりがあることや、子どもに運動習慣をつけていくことなど、多岐にわたっています。また、自治体も屋内公園建設に積極的に取り組んでいることから、住民のニーズや自治体の取り組みを見ながら、支援の度合いを変えていくことがNPOの活動として重要になっています。
南相馬市では住民の願いがかない、2014年4月より市が運営する屋内公園がオープンします。この新しい施設は、ふくしまインドアパークよりも大規模で、多くの遊具で遊ぶことができ、幅広い年齢層の子どもが無料で利用することができます。これにより、安全で安心して遊べる屋内遊び場を提供する目的が達成されましたので、ふくしまインドアパーク南相馬園は2014年2月28日をもって運営を終了することになりました。終了後は別のNPO組織が運営する、発達障がい児の療育施設となります。たくさんのご支援をうけて運営してきた園を閉めるのは残念なことではありますが、南相馬市の遊び環境の拡充や、障がいを持ったお子さんでも健やかに成長できる環境が整うことにつながるので、意味のあることだと考えております。
郡山市については、市が運営する屋内公園はあるものの、人口も30万人と多いことからまだまだ足りていない状況です。また、子どもに遊びを通じて運動習慣を身に付けさせたいニーズも根強いことから、郡山園は2014年度も継続して運営をしていきます。これからも被災地での子育てに寄り添った支援を続けていきたいと考えています。

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