復興支援助成金

生涯現役で暮らせる町づくり
すばらしい歌津をつくる協議会

Focus31

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「すばらしい歌津をつくる協議会」の小野寺寛前会長に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。

これまでの活動を聞かせてください。

震災直後はとにかく生きていくための支援でした。外から入ってくる支援を避難所に届ける。行政が配給センターを閉じてからも物資の支援が続いていましたので、本吉の峰仙寺を通じての支援物資は町に代わって協議会が窓口を担当しました。特に炊き出しは被災者に喜ばれ、不満や不安を和らげる効果があったようです。
状況が少し落ち着くと、情報が届かないことに住民は不安を感じ始めました。そこで、情報誌を4月5日から作業を開始し、第1号を4月17日に創刊しました。やがて仮設住宅への移転が始まり、歌津の場合は、幸いにも地域ごとにまとまって移転ができました。南三陸町では子供の減少が懸念されていますが、歌津地区は激減という状態には至っていません。
元々この地域では、「契約講」と呼ばれる相互扶助の組織がありました。海側が被害に遭えば山側が助ける、山火事があれば海の住民が助けるといった、支え合って生きる仕組みをつくっています。毎年やませに見舞われ、大勢の人が亡くなる過酷な状況の中で工夫されてきた生き方だと思います。沿岸地域には昔からそんな考え方がベースにあり、今回の震災でも活かされています。

現在はどんな活動を?

現在のテーマは高台移転。昨年、自治体との協議で28カ所の移転地域が決まりました。これから具体的な移転に向け、協議を進めていく必要があります。住民や自治体に任せっきりにするのではなく、積極的に関与して少しでも早く移転ができるよう促しています。先行事例の福島を視察に行く予定です。新しい町づくりを、そのプロセスも含めて参考にしてきたいと思っています。
手仕事の活動も国内の各自治体の協力で続けています。始まりは、町の間伐材でつくった絆ベンチの端材を利用したストラップをボランティアに配ったことでした。これを商品化して販売したところ、6,500本も売れました。布草履も初めはアフリカの子どもたちに送っていましたが、品質が向上し商品化しました。アロマキャンドルなども講師を招いて技術指導し、質の高いものを制作しています。キャンドルは850円で販売していますが、350円を材料費など諸雑費に当て、500円は制作者へ渡しています。60~70歳代の高齢の方が多いのですが、コミュニケーションの場としても役立っています。何もしなければ茶飲み話で終わるところ、月に2~3万円の収入になると喜ばれています。中には40日間で11万円の収入になった方もいます。
最近は炊き出しイベントでも、有料で提供するようにしています。自立意識を高めてもらいたいからです。宝塚市が高齢者を招待してくれていますが、旅費は手仕事の売上代金から負担しました。これも自立を意識させる一環で実施したことです。
震災のあった年、奈良県十津川村が台風被害を受けた時、歌津の被災者が募金を行い、義捐金を送りました。震災直後に奈良県の方にお世話になったことがあり、定例会で支援を決定しました。何かお返しがしたいという気持ちの表れでした。

ご苦労されているのはどんな点ですか。

平成の森会議室や老人福祉センターを手仕事の作業場として使っていますが、移転が進んでくると作業場所の確保が難しくなります。協議会主導ではなく、制作者が主体となって事業化していくことが望まれますが、なかなか手を挙げてくれる人がいないのが実情です。
つくられた商品は、今のところは協力してくれているボランティア団体が責任を持って買い取ってくれています。しかし時間が経つにつれ、販路の維持が難しくなってきています。新商品の開発も必要。資金も人材も不足し、支援する側、支援を受ける側にも正直疲れがみえてきています。
被災地の状況は刻々と変化していますので、ニーズに応えているかが問われています。

今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。

南三陸町は、太陽や海、川といった自然の恵みを頂き、その恩恵で生きている地域。自給自足が基本で、足りない分を現金収入で補う。旬の食材を加工して付加価値をつけて販売する。そこには雇用も生まれます。山や海は観光資源にもなります。
人づくりも大切です。子どもたちにも地元の歴史的・地理的な魅力を教え、一人一人を認め合う人間としての根源を学ばせることも必要。地域や学校も参加し、次の時代を担う人を育てていくことが大切です。
田畑を提供するなど、町の外から人を呼び込むための仕組みも考えていきたいと思います。理想は、「契約講」を活かし、生涯現役で暮らせる町づくり。町の外の人がうらやむような場所にしていきたいと思っています。

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