復興支援助成金

被災地のたくさんの人に
笑顔を届ける
笑顔プロジェクト

Focus26

当財団は、被災地の復旧・復興支援活動を行うNPOや社会福祉協議会などへの助成金制度を実施しています。助成先の一つ、「笑顔プロジェクト」の浅間勝洋理事長に、活動を始めたきっかけやこれまでの活動内容、今後の抱負などについて聞きました。

東日本大震災の被災地・被災者への復興活動を開始した理由、きっかけを教えてください。

震災直後は関係者の安否確認に追われましたが、4月になって、東北にゆかりのある仲間といっしょに被災地での支援を考え始めました。カメラマンのマネージャーをしているので、津波で写真を流された被災者に、家族写真を撮ってプレゼントしようということになりました。カメラマンのみならず、仕事仲間のヘアメイクやモデルからも手が上がり、ロケバスの会社の協力も得られ、約30名のクルーで最初に入ったのは陸前高田の中学校の避難所でした。

これまでどのような活動をされてきたのですか。

2013年10月までに延べ140ヵ所以上で写真撮影してプレゼントしてきました。金曜夜に東京を出発し、土日に活動して、日曜夜に戻るのが通常のスケジュールです。いざとなれば車での寝泊まりもいとわない仲間たちと、岩手から福島まで巡回し、約5,000名の写真を撮影しました。町の風景や地域の食材の写真なども合わせると2万枚にもなります。証明写真を持ってこられた方に、遺影用に引き伸ばすこともなども行いました。
子どもの写真を撮って欲しい親御さんや、プロがメイクするので多数の若い女性が参加してくれます。サッカーイベントなどといっしょに行うと男の子も参加してくれますし、お孫さんといっしょの写真を求める高齢のかたもいます。フラワーアレンジメントを仮設住宅で午前中に行い、作品といっしょに撮影する会もあります。撮影した写真を飾ってもらえるよう、オリジナルのスタンドづくりもしています。
写真展も東京や仙台などで6回開催しました。

ご苦労されたのはどんな点ですか。活動を通じて印象に残っていることは?

難しいのは、継続した活動資金の調達。現在は主に助成金と補助金、参加者負担です。事業としての継続性を考えていかなければと思っています。
「震災3年目になっても、写真を撮る必要があるのか」と指摘されることがあります。経済性や雇用創出を優先すべきという意見があることも確か。しかし被災地では3年目であっても、「震災後に撮った初めての写真」と喜ばれるのが実態です。被災地の現状が理解されていないと感じます。
最初に陸前高田に入ったときには、体育館は立ち入り禁止で、廊下の片隅でオープンしました。まだ生活に追われ、喜んでいただけるか不安でした。子どもたちは比較的元気で、おもしろ半分に化粧をして写真を撮り始めました。するとどんどん参加者が増え、「お礼を言いたいので中に入って欲しい」と全員が避難所となっていた体育館の中に招かれました。来てよかった、やって良かったと実感できた瞬間でした。その際、避難所暮らしをする女性と近隣からサポートに来ている女性の写真を一緒に撮影しました。先日、二人と再会したのですが、その時の写真がきっかけで友人関係になったということでした。
私には陸前高田に親戚がいるのですが、幸い命は助かったものの家は全壊しました。幼いころ訪ねたきりでしたが、この活動をきっかけに久しぶりに会うことができました。再会を心から喜んでくれて、新しい絆が生まれました。
高田高校の学生の中にはメイクをしてもらったことに感動して、ヘアメイクの学校に進学した生徒もいます。東北に縁のある人間が東京で活躍する姿を見て憧れる。私たちの活動を通じて、多くの子供たちに夢を与えられたらとも思っています。

被災地の変化をどのように感じていますか。

震災から3年目に入り、家を持つ方もあり、生活もある程度安定してきました。一方ではいまだに立ち直れない方もいらっしゃいます。支援が入っているところとそうでないところの格差がある。私たちはできるだけ支援の手が届いていない地域で、笑顔をつくりたいと考えています。
私たちのFacebookは3万1,000人から“いいね”を頂いています。活動場所もFacebookで問い合わせがあった先にすることもあります。スタッフもFacebookやメール、電話を使って集めます。これまでに延べ1,100人が参加しています。

今後の活動予定や抱負を聞かせてください。自分たちの活動を通じて、被災地や被災者へ、どんな“希望”を与えたいとお考えですか。

いまだに29万人の方々が住み慣れた家を離れての生活を余儀なくされています。ゼロになるまで活動を続けていきたいと思います。
岩手県のある自治体で市長さんと1年に1回、市役所職員の写真撮影を約束しました。
市役所職員は現在300名弱。市長から、写真は一瞬を切り取れるし、記録するのに適している、また机の上に置いておける、というご意見を頂きました。震災では多くの公務員が震災の犠牲になりました。市役所職員の方は、被災しながらも市民の苦情に耐えながら仕事をしている。復興を進めるために市役所職員の方々にがんばってもらわなければならない、そのために年に一度記録に残して励みにしてもらいたい、また他の行政からの出向者の記録も残したい、というのが要望でした。
嬉しいのは、弱っている方に喜んでもらえること。被災地の方々は風化を心配し、「来てくれることでがんばれる」と言われます。継続して被災地に足を運び、被災者に勇気や希望を与えられればと思っています。
事業継続の手段として、郷土ならではの特別な食材販売を考えています。沿岸地域ではどこでも、海産物などの食材が豊富です。その中でも“あえて一番”をお聞きし、その町一番の食材を紹介して頂いています。あれもこれも売るのではなく、厳選した郷土の一品を販売する。定着すれば、震災に関わらず事業として継続できるはずです。

『特定非営利活動法人 笑顔プロジェクト』webサイトはこちら

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